
箱根の『オーベルジュ・オー・ミラドー』で彼女と過ごす楽しい一日の続き。
素敵なフレンチの夕食を終えパヴィヨン・ミラドーの部屋に戻ると、休む暇もなく温泉へ出かける。
温泉があるのはお隣のコロニアル・ミラドー。

昼間はエキゾチックな雰囲気だと思った場所が、夜になるとインディアナ・ジョーンズの世界に早変わり。
門は魔宮の入り口に見えるし、門をくぐると妖しげな像たちが暗闇に潜む。

この暗い道を歩かないと、温泉に辿り着けないのだ。
考えてみると、今夜はレストランもホテルも温泉も私たちの貸し切り状態。
ということは、夜になってしまうと私たち以外に人は居ないということ。
温泉のあるコロニアル・ミラドーは温泉を除き今日は閉館しているので、人は全く居ないはずだ。
「ね、怖いでしょ。僕から離れないで」と私。
「うぅん、とっても素敵でワクワクしちゃう」と彼女。

仏頭には微かに照明が当てられ、暗闇に仏陀の顔が妖しく浮かぶ。
彼女を少し怖がらせようと思ったが、全く意に介していないようだ。

ようやく温泉の入り口に着く。
ここは昼も夜も薄暗く、香の香りが漂う。
一番奥の部屋では、バリ島風のスパを楽しむこともできる。

この部屋には、いくつかの石像が置かれている。
インド中東部、オディッシャ州のブバネーシュワル辺りでよく見かけた石像とそっくりだ。
ブバネーシュワルの石像も、豊かな肉体を持つ女性の像で、水瓶や楽器を持っているものが多い。

子供を抱いた像も多かった。
水瓶は豊かな実りを表し、豊満な肉体や子供、そして楽器は国の繁栄を表しているのだろう。
こちらの像はよくわからないが、楽器をもっているのではないかと思う。

おや、この像はガネーシャのようだ。
像の頭を持つヒンドゥーの商業の神様である。
でもよく見るとちょっと違っている。
ガネーシャはほとんどが座像だが、これは立像。
手が4本あり片方の牙が折れているが、これは手が2本で牙もあるのかないのかよくわからない。

広い湯船を独り占めできるのは気持ちが良い。
でも、外は暗くて何も見えない。
外からは明るい室内は良く見えるのだと思うと、あまり気持ちは良くない。

一夜明けた翌日の朝。
雨が降っているが、芦ノ湖は見える。
朝食前にひと風呂浴びることにする。

朝の温泉。
朝はあまり強くない彼女も早起きし、温泉に付き合ってくれる。
外が良く見えるので、やはり明るい時間に入る方が気持ちが良い。

部屋に戻ると、ルーム・サービスで朝食を楽しむ。
バルコニーで食べたかったが、今朝は雨。
籠いっぱいに盛られたパンは、パティシエが早起きして作ってくれた焼き立て。

温かい蕪のスープが美味い。
フレッシュ・グレープフルーツ・ジュースに舌も胃も喜ぶ。
キウイも好物。
実家の庭にはキウイの樹があり、毎年何百個もキウイが採れたことを想い出す。

まずはサラダから。
普段から、朝食には大きなボウルいっぱいのサラダを食べるようにしている。

たんぱく質が少ないのに気が付いた。
温泉卵にはキャビア添え。
ムースは濃厚なビスク味。

手作りジャムが絶品。
梅、林檎、オレンジ、苺のジャムをたっぷりつけてパンを食べる。
今日だけは自分を甘やかしてしまう。

プレーン・ヨーグルトには、グラノーラを入れて味わう。
ひとつひとつの量は少ないのだが、色々な種類があるのでお腹はいっぱい。

コーヒーポットとミルクポットにはティー・コージーがかぶせられている。
熱々のコーヒーに、熱々のミルクを入れて楽しむ。
彼女と一緒にのんびりゆっくり朝食を食べるのは楽しい。
食事を済ませたら、帰途につくことにしよう。
箱根の『オーベルジュ・オー・ミラドー』で彼女と過ごす、素敵で美味しい一泊の旅でした。