今夜は彼女と六本木ヒルズで待ち合わせ。
車で向かった先は、二人が大好きなフレンチのお店、『キャーヴ・ド・ひらまつ』。
西麻布にある白亜の一軒家レストランである。
このお店との付き合いは長い。
前身の『ル・レゼルヴ・ド・ひらまつ』が開店したときからのお付き合いだ。
支配人に案内され、レトロなエレベーターで3階のメイン・ダイニングに向かう。
テーブルには、今夜のメニューが置かれている。
二人ともしばらく無言で、メニューを読む。
料理やワインに関する彼女の質問に答えるのも楽しい時間。
今夜のアペリティフがテーブルに届く。
桃のピューレをスパークリング・ワインで割ったカクテル。
甘い桃の香り。
辛口のスパークリングの切れ味が心地よい。
使われているスパークリングは、ヴーヴ・アンバルのクレマン・ド・ブルゴーニュ、ブリュット、ミレジム、2014年。
ブルゴーニュを代表するクレマンの造り手で、クレマン・ド・ブルゴーニュの元祖ともいえる存在である。
『ひらまつ』グループのお店では、ハウス・スパークリングとして使用されており、私も良く飲むクレマンである。
前菜は、鮮魚のタルタルと玉蜀黍のムース、大葉の香るカポナータ。
使われている魚は、イナダ(ブリの若魚)。
「ね、カポナータってイタリア料理じゃないの?」と彼女。
「うん、シチリア料理だよね。フランスだと南仏のラタトゥーユが近い料理だね。きっとコクを出したかったのでカポナータにしたんじゃないのかな」と私。
料理そのものは、見た目に美しく、食べて美味しく、カポナータのイメージとは別物。
総料理長の柳原さんの料理は繊細で美しい。
白ワインは、ブルゴーニュのプイィ・フュイッセ。
プイィ・フュイッセを飲むのは久し振りだ。
グレープフルーツやアカシアの甘い香り。
ヘーゼルナッツの香ばしいニュアンスも。
豊かな果実味を持つ、素晴らしいシャルドネだ。
造り手は、ドメーヌ・J.A.フェレ。
1840年創立の、プイィ・フュイッセを代表するドメーヌの一つだ。
2008年からはルイ・ジャドが経営を引き継いでいるが、そのワイン造りの哲学は変わらず、樹齢の高い樹で少量生産したぶどうを用いて醸造している。
ルイ・ジャドが引き継いでからの醸造責任者は、若き女性醸造家、オドレ・プラチーニ。
伝統あるドメーヌの醸造責任者に若い女性を任命するとは、ルイ・ジャドが益々好きになった。
プイィ・フュイッセが美味しいので、どんどんグラスを傾けてしまう。
酔いが回り過ぎないように、パンも口に運ぶ。
ここのバゲットは美味いので、料理を味わうためには食べ過ぎ注意。
白ワインと合わせる魚料理は、鱧のフリット、ソース・ラヴィゴット、長茄子の煮浸しとパープルクララ。
「フリットもイタリア語だよね」と彼女。
「確かに、フランス語だとベニエのはずだね」と私。
「パープルクララって、何なの?」
「この綺麗な紫の茄子がパープルクララだよ。新しい野菜がどんどん出てくるね」
カリッと揚がった鱧が美味しく、シャルドネとの相性も抜群。
西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』で彼女と過ごす素敵な夜は、続きます。
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今夜は彼女とフレンチ、キャーヴ・ド・ひらまつ、西麻布
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