奈良の『オーベルジュ・ド・ぷれざんす』が楽しくて忘れられないと彼女が言う。
オーベルジュが好きなら、日本のオーベルジュの元祖、『オーベルジュ・オー・ミラドー』に行かなくてはと彼女を誘う。
かつて一世を風靡したフレンチ・レストラン、『ビストロ・デ・ラ・シテ』のオーナー・シェフだった勝又登氏が箱根に開いたのが、『オーベルジュ・オー・ミラドー』。
1986年に開設され、今年で創業30周年を迎えている。
ここには本館のオー・ミラドー、フレンチ・スタイルのパヴィヨン・ミラドー、アジアン・スタイルのコロニアル・ミラドーの三つの建物がある。
チェックインは一番古い建物、本館のオー・ミラドーで行う。
ウエルカム・ドリンクのハーブ・ティーが届く。
霧の中の運転で疲れた身体が、ゆっくりと癒されていく。
今夜の部屋は、パヴィヨン・ミラドー。
本館に続き二番目に建てられた、フレンチ・スタイルの瀟洒な館。
螺旋階段を上り、部屋に向かう。
「可愛い」と彼女。
「思ったより狭いね」と私。
「フランスの片田舎のオーベルジュに来たみたい」と彼女。
部屋にはバルコニーが付いている。
「バルコニーにテーブルがあるよ。明日の朝食はここで食べようよ」と私。
「明日は雨になると思うわ」と、現実的な彼女。
バルコニーに出て景色を眺める。
森の向こうに見えるはずの芦ノ湖は、霧の中。
ミラドーとは眺めの良い小高い場所を意味するのだが、今日の天気では眺望は望めない。
パヴィヨン・ミラドーの隣には、樹々の向こうに本館のオー・ミラドーがある。
今夜のディナーは、オー・ミラドーのメイン・ダイニングで食べる予定だが、オー・ミラドーは霧の中におぼろげに見えるだけ。
ベッドの上には、パヴィヨン・ミラドーの名前入りのバス・ローブとバス・タオルが置かれている。
「このバスローブ、ふわふわで気持ちよさそう」と彼女の評価も上々。
金色の小さな箱は、オーベルジュ特製のアーモンド入りトリュフ・チョコレート。
早速彼女が箱を開け、一粒を私の口に運んでくれる。
バスルームもチェック。
やたらと広いが、設備はクラシック。
「う~ん、本当にフランスの片田舎のオーベルジュといった感じね」と彼女。
ディナーまでは時間があるので、温泉を楽しむことにする。
パヴィヨン・ミラドーにも温泉の屋内の風呂と屋外の露天風呂があるが、混浴なので水着着用が必要。
今日はお隣のコロニアル・ミラドーにある男女別々の温泉に行くことにする。
こちらの小路を行くと、オー・ミラドーのサウナとプールに行くことができる。
反対側に進むと、コロニアル・ミラドーの温泉口に行くことができる。
コロニアル・ミラドーには結婚式場があるので、建物の逆側の二階に大きな正面玄関があり、宿泊者が温泉に入る入り口は一階の裏口となっているのだ。
コロニアル・ミラドーの裏側の門に至る。
ここからは全くの別世界。
そのご紹介は、また明日。
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オーベルジュ・オー・ミラドー、元箱根
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