彼女は最近忙しく、疲れが溜まっているようだ。
そこで、千代田区一番町の治療院を予約した。
私が身体を痛めた時には必ず駆け込んでいる、『江戸鍼灸院』だ。
半蔵門駅を出ると、一番町交差点を左折し、南法眼坂を少し登れば、右側のマンション内に治療院がある。
江戸さんは神の手を持っていると思っている。
ぎっくり腰になった時もすぐに治療してもらい、帰りは元気に歩いて帰った。
ゴルフのし過ぎで手首がひどい腱鞘炎になった時は、外科では手術を勧められたが、江戸さんはメスを入れるべきではないと言って丁寧に治療してくれ、完治した。
施術台の横には、膨大な量のCD。
クラシック音楽を聴きながら暖かい施術台でマッサージを受けるのは、まさに極楽。
マッサージ、整体、鍼、灸を組み合わせ、症状に合った最適な治療をしてもらえるのだ。
まず私が先に1時間20分の施術を受け、彼女の到着を待つ。
彼女が施術を受けている間は、コーヒーを飲みながらのんびり過ごす。
奄美大島の黒糖が美味しいので、コーヒーに入れずにポリポリと齧ってしまう。
彼女の施術が終わると、予約している今夜のお店に向かう。
向かった先は白金高輪のフレンチ、『ラ・クープ・ドール』。
先日、パトモスさんの歓迎会で色々無理を聞いていただきお世話になったので、お礼を兼ねての訪問。
店名の『ラ・クープ・ドール』とは、”黄金の杯”という意味で、シャンパーニュを注いだグラスをイメージしたもの。
開店後すぐに入店したので、一番乗り。
ここでは、カリフォルニアの先駆的日本人醸造家、ナカイ・ヴィンヤードの中井章恵(ナカイ アキヨシ)氏や、人気の醸造家、マボロシ・ヴィンヤード&ワイン・エステートの私市友宏(キサイチ トモヒロ)氏、カリフォルニアのカルトワイン、ダリオッシュの社長、ダニエル・デ・ポロ氏と食事をご一緒したことがある。
キッチンはオープンになっており、坪香絢也(ツボカ ジュンヤ)シェフが率いるチームが忙しく今夜の料理の準備を進めている。
パトモスさん歓迎会の時の料理が美味しかったので彼女にも食べてもらいたいと思い、坪香シェフにその旨を伝え、お任せで今夜の料理をお願いしている。
「ここ、本当に久し振りだわ。シェフがどんな料理を考えてくれているか楽しみね」と彼女も嬉しそう。
テーブルにセットされた小さなブーケがとても素敵だ。
最初のボトルは、シャンパーニュ。
アイ村の名門、アンリ・ジローのエスプリ・ナチュール。
アンリ・ジローは1625年創業で現当主は12代目。
今では日本でも超人気だが、日本に紹介されたのは2006年と新しい。
コルクの状態もとても良い。
Gのマークが入ったミュズレは、黄金色。
グラスに注いだワインも綺麗な黄金色、まさにラ・クープ・ドール。
レモンや青リンゴ、黄桃の香り。
豊かな熟成感を持ち、アーモンド、トースト、温度が上がってくると蜂蜜も感じる。
リザーブワインの比率は50%ととても高い。
セパージュは、ピノ・ノワール80%、シャルドネ20%。
アミューズは、牡蠣のクリームとアオリイカ。
口の中でとろける美味しさ。
もう一つのアミューズは、秋刀魚のリエットとオリーブの枝。
「坪香シェフのお料理、フォトジェニックになったわね」と彼女。
オリーブの枝に、この秋刀魚のリエットを付けて食べる。
温かなパンも届く。
ホイップバターの出され方も洒落ている。
前菜は、豊後水道直送の神経〆天然真鯛のマリネ、柿と生アンチョビのアクセント。
最近は漁業者の方の魚の〆方が向上し、魚が美味しくなった。
モチモチとした食感に旨味が凝縮された真鯛が素晴らしい。
柿のソースも良く合う。
温前菜は、北あかりのポタージュとモンサンミッシェル産ムール貝、トリュフのリゾット添え。
北あかりの温かいスープが注がれ、料理が完成。
野菜を横にどけると、下にはプリプリのモンサンミッシェル産ムール貝。
モンサンミッシェルのムール貝は、小さな身に旨味が凝縮されていて美味しい。
温前菜の付け合わせは、トリュフのリゾット。
鶏小屋から届いたような演出。
トリュフの香りが素晴らしい。
鶉の卵を注ぎ込んで食べる。
円やかで深みのある味わいのリゾットが美味い。
白金高輪のフレンチ、『ラ・クープ・ドール』で彼女と過ごす素敵な夜は続きます。