神楽坂のイタリアンの名店、『しゅうご』で彼女と過ごす楽しい夜の続き。
泡を飲み干すと、赤ワインを抜栓。
何時ものバローロが品切れだったので、お薦めのネッビオーロを抜栓。
ロエロ・ネッビオーロだが、価格はバローロと遜色なく、これは美味そうだ。
ピエモンテ州のネグロ・アンジェロ・エ・フィリが造る、ネグロ・プラキオッソ、ロエロ、2014年。
タンニンがまだ硬いとのことで、デキャンタージュされて届けられた。
フランボワーズやスミレの素晴らしい香り。
確かにタンニンは強く硬いが、果実味があるのでバランスが良い。
時間と共に円やかさが増し、長い余韻を楽しむことができる。
目の前に美味しそうなプロシュートが置かれていたので、メニューには無いが切ってくれるようにお願いする。
すると、満席で20人近い客の料理を一人で忙しく作っている手を休め、廣瀬シェフが自ら切ってくれた。
半頭買いした天城黒豚の腿を使った、シェフお手製の生ハムなのだ。
「これの次の生ハムはあそこで熟成させています」とシェフが指さす部屋の隅には、布で包まれた腿肉がぶら下がっている。
「熟成していて美味しいわね。自分で作っちゃうなんて、トラットリア・ダイ・パエサーニのジュゼッペさんみたいね」と彼女。
「そう言えば今日神楽坂に来るときに、地下鉄でジュゼッペさんに会ったよ」と私。
ジュゼッペさんはサラミマイスターで、色々な種類のハムやサラミを自分で作られているのだ。
吉田牧場ラクレットチーズフォンデュ、温野菜と。
岡山の吉田牧場のチーズを使うとは、さすが廣瀬シェフ。
根菜類が甘みがあって美味しい。
大部分は廣瀬農園でシェフの自家製だが、幾つかは近所の農家さんの野菜なのだそうだ。
熱々トロトロのラクレットチーズ。
二人で交互に野菜を絡めて皿に取る。
皿に取って少し冷ますとチーズが固まってくるので、野菜に上手く絡めて食べることができる。
濃厚なラクレットチーズと甘みのある根菜が良く合って美味い。
ホタルイカと葉玉葱のキターラ。
この葉玉葱も廣瀬農園の自家製野菜。
たっぷりのホタルイカが嬉しい。
あっさりとしたオイル味なので、ホタルイカの旨味が引き立つ。
メイン料理は予約の時に蝦夷鹿を頼んでおいた。
彼女はここの蝦夷鹿が一番好きなのだ。
蝦夷仔鹿の蒸し焼き。
素晴らしい焼き色。
生後一年未満の仔鹿なので、肉質が緻密で柔らかい。
バルサミコソースとの相性も抜群。
「やっぱり蝦夷鹿はここが美味しいわね」と彼女は満足した様子。
デザートは二人とも同じものを選んだ。
ガトーショコラ、いちごと。
最近採用された助手の女性料理人の盛り付けだが、大胆というべきか独創的というべきか雑というべきか迷うところだが、味はとても良い。
食後はコーヒーでいっぱいになった胃袋を癒す。
「今夜も美味しかったわ。ありがとう」と彼女。
廣瀬シェフに礼を述べ店を出ようとすると、シェフを始めスタッフ全員が外まで見送りに出てくれ、かえって恐縮してしまう。
神楽坂通りに出て飯田橋方面に下る。
すると彼女が、「あ、ここのケーキ食べたい」と、『チカリシャス・ニューヨーク・アマリージュ』の前で立ち止まる。
ここのケーキは何度か買っているが、確かに美味しい。
ガトーショコラとアップルパイを購入。
あれ、そいえばガトーショコラは『しゅうご』で食べたばかりだった。
神楽坂通りを肩を並べ、のんびり話ながら下る。
お腹がいっぱいで適度に酔っているので、冷たい夜風も心地良い。
彼女と過ごす神楽坂の夜は素敵に更けていきました。