またまた時系列を無視し、比較的最近の記事をアップ。
10月のこと、茶目子さんと上野で待ち合わせ。
待ち合わせ場所に10分以上早く到着。
少し周辺を見て歩こうと思っていたが、何と茶目子さんもほぼ同時に到着。
上野公園には平日の午後とは思えない多くの人出。
外国人観光客も居るが、大部分は日本人。
暇な人が多いものだと周囲を見回すが、よく考えると他の人からは私達も暇な人に見えているのだろう。
竹の台広場(噴水広場)では何かの催しで多くのテントが設営されている。
ひとつは、”第21回 さつき盆栽 錦秋展”。
もう一つは”食フェス”。
どのブースも美味しそうだが、我慢我慢。
向かったのは、「東京国立博物館」。
今日はここで開催されている二つの特別展を鑑賞する予定。
チケットを二枚ずつ入手された茶目子さんにお誘いいただいての嬉しい訪問なのだ。
まず鑑賞するのは「平成館」で開催されている特別展、”やまと絵 受け継がれる王朝の美”。
ここを訪問するのは昨年春の”ポンペイ展”以来。
その時の記事はこちら。
芸術の秋を迎え、上野公園内の博物館や美術館では多くの企画展が開催されている。
作品によって展示時期が異なるものもあるが、多くの国宝(53点)、重要文化財を含む延べ245点の素晴らしい歴史的価値の高い作品が展示されている。
パンフレットの説明は以下の通り。
「平安時代前期に成立したやまと絵は、以後さまざまな変化を遂げながら連綿と描き継がれてきました。
本展は千年を超す歳月のなか、王朝美の精華を受け継ぎながらも、常に革新的であり続けてきたやまと絵を、特に平安時代から室町時代の優品を精選し、ご紹介するものです。
これら”日本美術の教科書”と呼ぶに相応しい豪華な作品の数々により、やまと絵の壮大、かつ華麗な歴史を総覧し、振り返ります」。
展示は序章以下、六つの章に分かれている。
序章 伝統と革新-やまと絵の変遷-
「やまと絵は中国由来の唐絵、もしくは漢画との対概念で成り立っているため、その概念は時代によって変化する。
これら唐絵、漢画と見比べながら、平安時代から室町時代に至るやまと絵の歴史を大きく捉える」。
平安時代から鎌倉・室町時代にかけての屏風、10点が展示されている。
【国宝】山水屏風、6曲1隻 鎌倉時代(13世紀) 京都・神護寺蔵
現存最古のやまと絵屏風。
失われた平安時代やまと絵の姿を伝える貴重な作品。
【国宝】日月式山水図屏風、室町時代(15世紀) 大阪・金剛寺蔵
室町時代やまと絵の力強さ、ダイナミズムを体現した作品。
第1章 やまと絵の成立-平安時代-
「やまと絵の成立と発展には貴族たちの文化的な営みが大きな基盤となった。
これら王朝貴族の美意識が込められた調度手本や装飾経、工芸品などとともに、四代絵巻をはじめとする院政期絵巻の数々から、平安時代やまと絵の実態に迫る」。
ここでは、和漢朗詠集、三大装飾経(久能寺経、平家納経、慈光寺経)、四大絵巻(源氏物語絵巻、信貴山縁起絵巻、伴大納言絵巻、鳥獣戯画)など、70点が展示されている。
【国宝】源氏物語絵巻 夕霧、平安時代(12世紀) 東京・五島美術館蔵
現存最古にして最高峰の王朝物語絵巻。
【国宝】信貴山縁起絵巻、平安時代(12世紀) 奈良・朝護孫子寺蔵
ストーリー展開の妙、ここに極まれり。
【国宝】伴大納言絵巻 伝常磐光長筆、平安時代(12世紀) 東京・出光美術館蔵
宮廷絵所絵師の描く歴史的事件。
【国宝】鳥獣戯画、平安~鎌倉時代(12~13世紀) 京都・高山寺蔵
描線の妙技を堪能。
第2章 やまと絵の新様-鎌倉時代-
「鎌倉時代になっても、やまと絵を担っていたのは宮廷貴族社会だった。
写実性に関心を払いながらも人物や風景の理想化が志向され、王朝時代を追慕する美術やさまざまな主題の絵巻が数多く作られた。
これら新しいやまと絵の動向をご紹介する」。
ここでは91点が展示されているが、その中でも今回見たかったのは神護寺三像(伝源頼朝像、伝平重盛像、伝藤原光能像)。
【国宝】伝源頼朝像、鎌倉時代(13世紀) 京都・神護寺蔵
神護寺三像は横幅1mを超える一枚絹に描かれた、ほぼ等身大の人物像。
教科書の小さな写真でしか知らなかったが、実物はとても大きく存在感がある。
【国宝】一遍聖絵、法眼円伊筆 鎌倉時代・正安元年(1299) 神奈川・清浄光寺(遊行寺)蔵
時宗の祖、一遍の事跡を描いた伝記絵巻。
一遍が訪れた全国の社寺の様子が詳細に描かれている。
【重要文化財】紫式部日記絵巻断簡、鎌倉時代(13世紀) 東京国立博物館蔵
紫式部が仕えた藤原彰子(藤原道長の娘で一条天皇の中宮)を中心とする華やかな宮廷生活が描かれ、当時の美意識の高さを知ることができる。
第3章 やまと絵の成熟-南北朝・室町時代-
「南北朝・室町時代には、水墨画に対抗するかのように多彩な色目と金銀加飾による華やかで眩い画面がやまと絵で志向される。
和漢の美が融合し、新たな文芸に触発された美術が花開いた成熟期のやまと絵の様相を探る」。
ここでは、土蜘蛛草紙、百鬼夜行絵巻など、41点が展示されている。
【重要文化財】百鬼夜行絵巻、伝土佐光信筆 室町時代(16世紀) 京都・真珠庵蔵
闇夜に行列する妖怪たちの姿を描いた絵巻。
優れた技法で描かれている。
第4章 宮廷絵所の系譜
「やまと絵を主に描いてきたのは宮廷絵所絵師。
平安時代以来、日本美術における”和”の領域を担ってきた彼らの作品を通覧することで、時代を超えて継承される美意識を探求する」。
ここでは、年中行事絵巻、石山寺縁起絵巻など、25点が展示されている。
【重要文化財】年中行事絵巻(住吉本)、住吉如慶他筆 江戸時代・寛文元年(1661)頃、原本:常磐光長筆 平安時代(12世紀)
平安時代末、後白河天皇の命令で造られた、宮中や都の儀式行事祭礼を描いた絵巻。
半世紀ぶりの公開なのだそうだ。
終章 やまと絵と四季-受け継がれる王朝の美-
「およそ千年にもわたって描き継がれてきたやまと絵において、四季の景物を描くことは主要なテーマの一つだった。
過去の伝統を踏まえながらも新たな表現を獲得してきたやまと絵の真髄を、四季絵の要素を踏まえた作例を中心にご覧いただく」。
ここでは、浜松図屏風、月次風俗図屏風、日月山水図屏風など、8点が展示されている。
【重要文化財】月次風俗図屏風 第八扇(部分)、室町時代(16世紀) 東京国立博物館蔵
”つきなみふうぞくず”と読む。
月ごとの行事や景物等を描く月次絵の伝統を引く作例。
圧巻の展示で素晴らしかったが、展示作品数がとても多く、かなり疲れた。
続いて向かったのは、本館。
観に来たのは、特別展”京都・南山城の仏像”。
パンフレットの説明を転載。
「京都府の最南部、木津川流域は南山城(みなみやましろ)と呼ばれる。奈良時代には都が置かれ、その後も大寺院や中央貴族と深く関わるなど、独自の仏教文化が展開したこの地域には多くの貴重な仏像が伝わっている。
平安時代に九体阿弥陀(くたいあみだ、9段階の極楽往生に関わる9体の阿弥陀如来像)の造像が流行したが、九体寺とも呼ばれる浄瑠璃寺のものは現存する唯一の群像。
また、かつて恭仁京(くにきょう)があった瓶原(みかのはら)を山腹から望む海住山寺(かいじゅうせんじ)の檀像、東大寺の僧侶が創建した禅定寺(ぜんじょうじ)の巨大な本尊など、この地域ならではの魅力にあふれている。
本展では浄瑠璃寺九体阿弥陀の修理完成を記念し、南山城に伝わる数々の仏像を通じて、その歴史や文化の奥深さを辿る」。
18体の貴重な仏像が展示され、正面からだけではなく、背面まで見ることができる展示が素晴らしい。
実は”やまと絵”展で疲れ過ぎ、ここでは集中力が切れてしまった。
主要な仏像の写真のみ掲載。
【国宝】阿弥陀如来坐像、平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺蔵
現存唯一の平安時代の九体阿弥陀のうちの1体。
穏やかなお顔立ちが美しい。
【重要文化財】十一面観音菩薩立像、平安時代(9世紀) 京都・海住山寺蔵
平安時代初期の木彫像を代表する名作。
大部分を一本の木から彫り出している技術は驚嘆に値する。
【重要文化財】十一面観音菩薩立像、平安時代(10世紀) 京都・禅定寺蔵
高さ約3メートルもの巨大な十一面観音菩薩。
禅定寺(ぜんじょうじ)創建時からの本尊。
【重要文化財】阿弥陀如来立像、行快作 鎌倉時代(1227年) 京都・極楽寺蔵
鎌倉時代に奈良で活躍した慶派仏師の仏像。
作者は快慶の弟子の行快。
とても整ったお顔立ちで、柔らかな衣の質感が素晴らしく表現されている。
二つの特別展を鑑賞し、心は満たされながらも疲れ切った二人は、次の目的地に向かいます。
ご一緒した茶目子さんの鑑賞記はこちら。