虎ノ門の『タニーチャ』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
赤ワインもトスカーナのサンジョヴェーゼを選んだ。
ポッジョ・ブリガンテが造る、アルズーラ、モレッリーノ・ディ・スカンサーノ、2012年。
モレッリーノ・ディ・スカンサーノは、フィレンツェの南約150kmにある地域で、ボルゲリに続く名産地として注目されている場所。
とても良いコルクが使われている。
モレッリーノ・ディ・スカンサーノは海に近い海洋性気候の場所で、起伏に富んだ地形、様々な地質、そして二本の川に挟まれていることにより、多様なミクロクリマが生み出されている。
モレッリーノはこの地域でのサンジョヴェーゼの呼び名で、モレッリーノ・ディ・スカンサーノとはブルネッロ・ディ・モンタルチーノと同じ類の名前。
「サンジョヴェーゼには亜種がいっぱいあるし、名前もいっぱいあるので覚えるのが大変ね」とは、彼女の感想。
口に含むと、圧倒的な果実味に驚かされる。
芳醇で熟成感も強いが、ボディは過度に重厚ではなく、引き締まっている。
モレッリーノ・ディ・スカンサーノのワインは、要注目である。
真鱈の白子のフリット。
ふわふわの白子が美味い。
まだ残っていた白のサンジョヴェーゼを合わせると、とても美味い。
フレッシュ・ポルチーニとフォアグラのポタージュ。
素晴らしい香り。
口に含むと旨味が広がる。
熱々のパンで、ポタージュを残さず掬い取る。
猪のラグーソースのパスタ。
強いソースなので、赤のサンジョヴェーゼとの相性が良い。
素晴らしい香りと共にメイン料理が運ばれてきた。
熟成牛のハンバーグ。
二つに切り分けると、中はピンク色。
ジューシーで美味い。
サンジョヴェーゼがどんどん進んでしまう。
食後に残った赤ワインを飲みながら、彼女と話しが弾む。
飲み終えると、ドルチェの時間。
お腹はいっぱいだが、彼女が美味しそうに食べるのを見ると、私も食べてしまう。
食後には、イタリアン・ローストの強いコーヒーが旨い。
「ね、西麻布の『タニーチャ』の最初のお店に初めて行った時のことを思い出すわね」と彼女。
「若い能力ある料理人のお店に連れて行くよと君を誘ったのに、店の場所がわからず随分歩かせちゃったね」と私。
「そうだったかしら?! 私が思い出すのは、パスタの上を泳いでいる稚鮎とか、レアで焼かれたカンガルーのローストとか、驚きの料理のこと」
男性と女性では、記憶に残ることの順位が異なるようだ。
コーヒーのお供は、生チョコレート。
口に入れた途端に溶け、ビタースイートの旨味が広がる。
このお店のコーヒーは、イタリア・トレヴィーゾのエレクトラ。
ハンドメイドの美しいエスプレッソ・マシンの製造会社である。
この特徴のあるコーヒーカップは、アンカップ社のエディツィオーネ・ベライタリア。
ソーサーにはエレクトラの名前が入っている。
今夜の料理もワインも素晴らしかった。
茶谷シェフとソムリエの奥様に見送られ、店をあとにする。
虎ノ門で彼女と過ごす楽しい夜は、素敵に更けていきました。