彼女が久し振りに鳩を食べたいと言う。
そこで、青山の『ブション・アミュゼ』の前田シェフに連絡し、鳩の藁焼きを作ってくれるようにお願いした。
彼女と表参道で待ち合わせると、青山通りから一本南の路地に入る。
ディーゼルのネオンサインが明るく路地を照らしている。
路地を骨董通り方面に進むと、素敵なレストランが幾つもある。
このお店も来てみたいね、などと彼女と話しながら歩くのが楽しい。
骨董通りの少し手前に、今夜のお店、『ブション・アミュゼ』がある。
ここは一つ星レストラン、『ジョンティ・アッシュ』の進藤シェフがプロデュースしたお店。
進藤シェフと前田シェフは、『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション』で先輩後輩の関係なのだ。
10月に1周年記念パーティが開催され私もご招待を受けたが、残念ながら用事のため参加できなかった。
店の中は、秋の飾り付け。
あれ、まだジャク・オー・ランタンが置かれている。
今夜は、ワインのペアリングでお願いしている。
最初のワインはシャンパーニュ、テタンジェ、ブリュット・レゼルヴ。
シャンパーニュの貴婦人と称される、1734年創業の家族経営のメゾン。
シャンパーニュに288haの自社畑を保有し、シャルドネのグラン・クリュが集中するコート・デ・ブランのぶどうを多く使用していることでも有名。
泡立ちが素晴らしい。
グレープフルーツやライチの香り。
温度が上がってくるとブリオッシュや蜂蜜も感じる。
セパージュは、シャルドネ40%、ピノ・ノワールとピノ・ムニエが合わせて60%。
瓶内二次発酵後、3年以上の熟成を経てリリースされている。
前菜は、インカの目覚めのマリネとモンサンミッシェル産ムール貝。
モンサンミッシェルのムール貝は旨味が凝縮されていて美味い。
二種類目のワインは、ポルトガルの白。
最近、ポルトガルのワインを飲むことはほとんどない。
ポルトガルのワインは、昔は日本にもいっぱい入っていた。
マテウス・ロゼやトレス・マリアスを飲んだことがある方は多いと思う。
キンタ・ド・ソアレイリョが造る、ソアレイリョ、アロー、2016年。
色合いはグレープフルーツ色。
柑橘類の花やトロピカルフルーツの香り。
ミネラルも豊富。
アルコール度数は11%と低い。
ぶどうは、アルバリーニョとロウレイロ。
季節の温前菜は、秋刀魚と秋茄子のブリック焼。
秋刀魚と茄子の食感の組み合わせが面白い。
このバゲット、皮はパリパリで中はしっとり、たまらなく美味い。
作り手が誰なのか聞き忘れたのが残念。
三種類目は、フランスの赤。
スッド・ウエスト(南西地方)、マディランのアラン・ブリュモンが造る、ガスコーニュ・ルージュ、2016年。
アラン・ブリュモンはマディランの地ぶどう、タナ種を用いたワインの素晴らしさを世界に知らしめた功労者で、マディランの帝王と称される造り手。
タナの語源はタンニンだけあって、とても強いワインとなる。
ガスコーニュ・ルージュはタナ50%にメルロー50%のセパージュなので、円やかなボディをしている。
カシスやプルーン、ブラックチェリーのニュアンスに、シガーや黒土を感じる。
アラン・ブリュモンの中では一番普及版のワインだが、充分に楽しむことが出来る。
三皿目の前菜は、フォアグラと無花果のプランシャ焼き。
プランシャ焼きとは、鉄板焼きの事。
濃厚でトロトロのフォアグラは最高の美味。