中目黒のイタリアン、『フェリチェリーナ』で彼女と過ごす楽しい夜の続き。
ここは『アロマフレスカ』出身のシェフが開いた素敵なイタリアン。
フランチャコルタのボトルを空け、ロザートをグラスで飲んだあとは、選んでおいた赤を抜栓。
ピエモンテ州のガリアッソ・マリオが造る、バローロ、トレ・ウティン、2012年。
ガリアッソ・マリオは、1900年代初頭にワイン造りを始めた生産者で、伝統製法による高品質のワイン造りで定評がある。
トレ・ウティンは、バローロ地区の三つの畑のネッビオーロをブレンドして作られたワイン。
重厚な果実味と熟成感と、強いがこなれたタンニン。
これは素晴らしいバローロだ。
カシスやプルーン、ブラックベリーやラズベリー、そしてチョコレートやなめし皮のニュアンス。
ボディは強く、余韻も長い。
アルコール度数は14.5%と高いが、熟成感があるのでアルコールアタックは感じない。
伝統的でエレガントなバローロである。
ネッビオーロの樹齢は50年。
大樽で30カ月間熟成後、更に瓶内で10~12カ月間熟成させてリリースされている。
プリモ・ピアットの一皿目は、瀬戸内産炙り穴子のリングイネ、”秋ナスとアンチョビ・フレッシュハーブ”のソース。
この穴子、旨味が凝縮されて素晴らしく美味い。
パスタより穴子の方が量が多いのには驚き。
穴子でワインが飲めてしまう。
自家製からすみのパウダー。
これを散らして食べると一層美味しさが増す。
二皿目のプリモは、九十九里産ハマグリ、”トロフィエ”、くたくたブロッコリーとドライトマトのソース。
トロフィエはジェノヴァの手打のショートパスタ。
大きなハマグリが5個も入っている。
久し振りに食べるジューシーなハマグリが最高に美味い。
口直しのグラニテ。
何のグラニテかは、失念。
肉料理用にラギオールが届く。
私のラギオールの柄はグリーン、彼女のはピンク。
セコンド・ピアットは、白糠産蝦夷鹿の炭火焼、ロゼ仕立て、赤ワインソース。
ジロール茸やセップ茸等、三種の茸が添えられている。
火入れが素晴らしく、この赤味が食欲を誘う。
白糠産は、蝦夷鹿のトップブランド。
白糠町は、釧路の西隣の海に面した町で、野生の蝦夷鹿の生息地。
蝦夷鹿の隣には、大きなフォアグラの塊。
このフォアグラは、ハンガリー産。
トカイ・ワインを飲みたくなるところだが、バローロにも良く合って美味い。
お腹はいっぱいでも、ドルチェは別腹。
「今夜の料理も素晴らしかったわ。パスタが出なければ、今風のフレンチかと思ってしまうくらい素敵な料理だったわね」と彼女。
「うん、このお店も進化しているね。そして今夜の君も料理に負けず劣らず素敵だよ」と私。
「料理と負けず劣らずなのね」
「ごめん。今夜の君はここの料理よりもっと美味しそうだよ」
「意味不明」
食後のコーヒーが美味い。
イタリアンの時は消化剤としてグラッパを飲むことが多いのだが、今夜はワインをたっぷり飲んだので、食後酒は封印。
シェフとマネジャーに今夜の礼を述べ、店をあとにする。
目黒川は闇の中に沈み、街頭の反射光で辛うじて水面の位置がわかる。
中目黒のガード下と周辺は再開発され、人気のスポットとなっている。
このつけめんのお店『三ツ矢堂製麺』は、先日PEDROさんに『とりまる』で食べた後に連れてきていただいたところ。
今夜入ったお店は、お向かいにある『シティー・ベーカリー』。
もう夜も遅いので、パンはほとんど残っていない。
奥にはバーカウンターがあり、コーヒーだけでなくワインやスピリッツも楽しむことができる。
気が付くと、彼女はレジの前でトレーを持って私を待っている。
BLTサンドイッチ、ルゲラー、そして右上の変わったサンドイッチは何だろう。
名前を聞くと、スパイシー・サバサンドとのこと。
「イスタンブールで食べたサバサンドを思い出すわ」と彼女。
「ガラタ橋で食べたサバサンドは普通の食パンに挟んでたけど、これは見た目もインパクトがあるね」と私。
でも、これ三つで1,800円弱はちょっと高いと酔った頭で考えてしまう。
彼女と過ごす中目黒の夜は素敵に更けて行きました。