彼女と飯田橋で待ち合わせ。
神楽坂を上り、仲通りを右折する。
更に路地を右に入ると、今夜のお店、『ル・クロ・モンマルトル』がある。突き当りに見えているのは、昨年秋に訪問した『ル・コキヤージュ』。
お店は路地に面して間口が広い。
柵の中には、テラス席もある。
1998年開店の、老舗ビストロ。
店名の”ル・クロ・モンマルトル”とは、モンマルトルの丘にあるぶどう畑のこと。
神楽坂がモンマルトルと似ていることから初代のオーナーが付けた名前。
店内には、至る所に絵や写真が飾られている。
美しい絵も撮りたかったが、客がどんどん入店してくるので断念。
今夜も満席だ。
メニューを選ぶ前に、スパークリングをグラスで。
フランスのヴァン・ムスー、ルイ・ド・ベレール、ブラン・ド・ブラン、ブリュット。
ヴァン・ムスーだが、泡立ちが細かく勢いがある。
青リンゴやレモン、パイナップルの香り。
爽快な軽やかさを持つが、後味には蜂蜜の甘さが残る。
アミューズはパテのカナッペ。
ビスケットやクラッカーではなく、甘いパンが使われている。
バゲットは皮がパリッと香ばしく、中はしっとり柔らか。
中が柔らかくないと、ソースを掬い取る時に使いにくい。
白はボトルで注文。
ジャン・バティスト・ベショーが造る、コート・デュ・ローヌ、キュヴェ・プレステージ、ブラン、2015年。
どのような造り手なのか情報が無いが、ぶどうはヴィオニエ。
色合いは濃い黄金色。
ヴィオニエの華やかな香りは控え目。
まだ2015年だが、強い果実味と熟成感を持つ重厚なボディ。
フランス産ニシンのマリネ、ジャガイモ添え。
エスカルゴや田舎風のパテもあったが、二人ともニシンを選択。
このお店の特徴は、パリの料理を一切日本風にアレンジせず、そのまま提供していること。
ニシンは塩味が強いので、下に敷かれたジャガイモ、ニンジン、タマネギには味付けがされていない。
野菜の甘さとニシンの塩味が上手くマッチして美味い。
温かいポタージュが、寒い季節には嬉しい。
彼女は店のフランス人男性スタッフとフランス語で話ししている。
彼は彼女にはフランス語で説明するが、次に私に向き直ると流暢な日本語で説明してくれる。
イタリアンでもフレンチでも、彼女はその国の言葉でやりとりするので、私は置いてきぼり。
よし、今度ドイツ料理の店で逆の立場になるようにしよう、と思うが、東京のドイツ・レストランでドイツ語が通じるのかどうか知らない。
第一、ドイツ語は長く使っていないので、ほとんど忘れてしまった。
韓国料理のお店ではハングルで注文しているが、彼女はハングルも少しはわかるので、彼女の前で話すときは文法を間違わないように気を付けなければならない。
英語も彼女は若い時に留学していたので、歳をとってから留学した私より発音が良い。
語学では彼女と競争しない方が良さそうだ。
神楽坂の『ル・クロ・モンマルトル』で彼女と過ごす素敵な夜は続きます。