先月下旬のこと、彼女と神楽坂で待ち合わせ。
目的のお店は、二人が大好きなイタリアン、『しゅうご』。
廣瀬周悟シェフのお店である。
神楽坂(早稲田通り)にも夕闇が迫りつつある。
三週間前にお店を訪問し、廣瀬シェフに、彼女のために特別な食材を取り寄せてくれるようお願いしてある。
でもその前に、ちょっと寄り道。
イタリア食材のお店、『ドルチェ・ヴィータ』。
イタリアのフォルマッジオやプロシュート、ワインなど、イタリア産品が所狭しと並ぶ。
試食、試飲もすることができる。
店員さんに勧められるままに、20種類ほどを試飲し、すっかり良い気分。
「ねぇ、こんなに試飲したんだから買わなきゃ駄目よ」と彼女。
結局、これが美味しかった、これを飲みたいという彼女の好みに合わせ、6本を購入。
『しゅうご』が開店する時間となったので、移動する。
おや、見慣れぬ女性が厨房に入っている。
ようやくアシスタント・スタッフが見付かったようだ。
店の名前が書かれているのは、この小さな木の板のみ。
知らないと通り過ぎてしまう。
廣瀬シェフの真ん前のカウンターが私達の席。
今夜はどんな料理に出会えるか楽しみだ。
「何とか手に入れることができました」と三週間前にお願いしておいた食材をシェフが見せてくれる。
豊頃町蝦夷鹿のシンシンとタンモト。
貴重な食材だ。
今夜はこの塊を二人で食べるために、ここに来たのだ。
『ドルチェ・ヴィータ』で結構飲んできたので、泡は省略し、お薦めの白ワインをボトルで。
フランス、ロワールのアレクサンドル・バンが造る、ラ・ルヴェ、2015年。
プイィ・フュメで2007年に創業したが、自然でピュアなワイン造りに邁進するあまりプイィ・フュメの規格を外れ、AOCから追放されてしまった異端児。
ぶどう栽培はビオロジックで、エコセール、デメテールの認証も取得している。
ソーヴィニヨン・ブランの収穫は他のロワールの造り手とは異なり、熟してから行い、発酵は自然酵母、濾過清澄は行わず、瓶詰時に亜硫酸添加を行っていない。
濁りのある干し藁色。
フレッシュな果実香を持ち、活き活きとした果実味とキレのあるミネラルのバランスが良い。
初めて飲む造り手のワインだが、造り手の気骨を感じる素晴らしい出来栄え。
最初は、新ジャガイモのスープ。
ここでは何時も最初にスープが出されるのだ。
冷前菜を何にするか二人で相談。
今夜の8種類のメニューから二種類を絞り込む。
「鱸のカルパッチョと、鯵とキンカンのエスカベッシュとどちらがお勧めですか」と彼女。
「両方お薦めですので、半分ずつ盛り合わせでいかがですか」と廣瀬シェフ。
千葉県産鱸のカルパッチョ、自家製カラスミがけ。
神経〆された鱸は充分に熟成されており、とても濃厚で美味い。
鯵とキンカンのエスカベッシュ。
苦みと甘みを併せ持つキンカンが鯵のエスカベッシュに良く合う。
神楽坂の大好きなイタリアン、『しゅうご』で彼女と過ごす楽しい夜は続きます。