丸の内のフレンチ、『サンス・エ・サヴール』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
クレマン・ド・ブルゴーニュ、サンセールと飲んだ後は、驚きのワインが出された。
ルーション地区の造り手、マス・アミエルのモーリィ、1980年。
AOCモーリィはヴァン・ド・ナチュレルと呼ばれる甘口の酒精強化ワインの産地で、ぶどうはグルナッシュ。
マス・アミエルはモーリィで最も古い造り手。
39年熟成の古酒だが、酒精強化ワインなので衰えは全くなく、素晴らしい熟成感を味わうことが出来る。
ヴァン・ド・ナチュレルはぶどうの発酵途中にブランデーを加えて発酵を止め、糖度を高くした酒精強化ワイン。
特徴的なのは、モーリィの熟成のさせ方。
熟成はミュタージュと呼ばれる方法で行われ、ボンボンヌというガラス瓶で屋外で天日に当てて一年間熟成させている。
その後、35,000㍑の古い大樽で、9~14年間熟成させて造られているのだ。
(写真はテラヴェールのH.P.からお借りしました。)
フランス産フォアグラのポワレ、水晶文旦とグレープフルーツの温かなサラダ、クリーミーなポレンタのムースリーム、バニュルスワインのヴィネグレットソース、エルダーフラワーの香りと共に。
希少なフランス産フォアグラを使うところは、さすが『サンス・エ・サヴール』。
濃厚なフォアグラに、高知県産の水晶文旦とグレープフルーツの爽やかな酸味が良く合う。
ソースは、バニュルスワインを煮詰めて作ったヴィネグレット。
バニュルスは南仏ルーション地区の酒精強化ワイン。
フォアグラには貴腐ワインなどの甘いワインが定番。
ソースにも甘いバニュルスが使われており、モーリィもフォアグラに良く合う。
温かいパンも届く。
パンのお供はE.V.オリーブオイル。
石井支配人が「是非飲んでみて下さい」とのこと。
国産の搾りたてのオリーブオイルで、無濾過なのだそうだ。
フレッシュな果実味がとても美味しい。
高知県産イトヨリの蒸し焼き、福岡県産王リンギと栗のフリカッセ、ワタリガニのビスクソース、パースニップのムースリーヌ、海苔のチュイルを添えて。
ワタリガニのビスクソースの赤とパースニップのムースリーヌの白の対比が美しい。
パースニップはシロニンジンとも呼ばれているが、セリ科の二年草。
王リンギと栗のフリカッセと海苔のチュイルを取り除くと、大きなイトヨリの切り身が現れる。
このイトヨリは、普通の大きさの倍の1kgもある大物なのだそうだ。
王リンギとは、福岡で開発されたエリンギと雪嶺茸の交配種。
雪嶺茸は新疆ウイグル自治区等に自生する珍しい茸で、日本では福岡県の「きのこの里」で人工栽培を始め、王リンギの開発に繋がっている。
合わせているワインは、アルフォンス・メロが造る、サンセール、レ・ロマン、2007年。
美味しく好きなソーヴィニヨン・ブランなので、このグラスで4杯目。
丸の内産蜂蜜とパン・ド・エピスを纏ったシャラン産鴨フィレ肉のロティー、福井県産とみつ金時のモワルー、シヴェのサムサ、ポワブラードソース。
合わせるワインは、ドメーヌ・デ・エリティエ・ルイ・ジャドのプルミエ・クリュ、ボーヌ・ブレッサンド、ルージュ、2011年。
ドメーヌ・デ・エリティエ・ルイ・ジャドは、ボーヌ、コルトン・シャルルマーニュ、ピュリニー・モンラッシェ等の素晴らしい畑を保有する、ジャド家のドメーヌ。
やはり良いブルピノは美味い。
チェリー系の濃厚な香り。
この淡い色合いの液体のどこにこんな力が隠されているのかと驚くような強い果実味。
光にかざすと、ピンクの綺麗な像を結ぶ。
シャラン産の鴨は、骨付きで時間を掛けてゆっくりローストされている。
丸の内産の蜂蜜が使われているということは、皇居の花の蜜がいっぱい入っているということだ。
左端のモワルーに使われている”とみつ金時”は、福井県あわら市の富津(とみつ)地区で栽培された金時芋。
真ん中は柔らかな大根。
右端は、赤ワインで煮込んだ鴨のもも肉を入れたサムサ。
テーブル上の花と色合いがシンクロしている。
良く見ると、蘭とカーネーションの二種の花が活けられている。
香川県産完熟キウイ”レッドプリンセス”と白葡萄ゼリーのタルトフロマージュ、カレボー社ルビーチョコレートの濃厚なアイスクリームと共に。
見た目も美しいデセールだ。
レッドプリンセスはそれ自体がコンポートのような濃厚な味わいを持つキウイ。
ルビーチョコレートは、カレボー社が発見し製品化に成功したルビーカカオ豆から造られた、着色料もフルーツフレーバーも使っていない自然なルビー色のチョコレート。
デセールは小箱に入れられて出される。
丸ビルの地下に下りると、何時もの通り新丸ビル地下の成城石井に向かう。
ところが、サラダの棚は空っぽ。
台風の影響でサラダや弁当が届かないのだそうだ。
そこで地下の連絡通路を再び丸ビルに戻り、地下のナチュラルローソンでサラダを購入。
彼女と過ごす、丸の内での素敵で楽しい夜でした。