代官山の『メゾン ポール・ボキューズ』で彼女と過ごす、楽しい特別ワイン会の続き。
白ワインに合わせて出された魚料理は、舌平目のヌイユ添え、フェルナン・ポワン風。
ヌイユは、デュラム小麦のセモリナ粉で作られたフランスのパスタ。
故フェルナン・ポワン氏は、『ラ・ピラミッド』のオーナー・シェフで、ポール・ボキューズ氏の師匠。
この料理は、リヨンの『ポール・ボキューズ』のスペシャルティなのだ。
熱々のパンが次々と届く。
美味しいのでどんどん食べてしまい、お腹がいっぱいになるのが問題。
パンのお供は、エシレ・バター。
最初の赤ワインは、ブルゴーニュ。
フェヴレ、ボーヌ、プルミエ・クリュ、クロ・ド・レキュ、モノポ-ル、2007年。
フェヴレは、ニュイ・サン・ジョルジュに本拠を置く、1825年創業の7代にわたって続く名門。
久し振りに飲む、フェヴレのボーヌ。
熟したベリー系の香り。
強いが滑らかなタンニン。
10年の熟成を経た素晴らしいピノ・ノワール。
続く赤は、ローヌのジャン・リュイ・シャーヴが造る、エルミタージュ、ファルコネ、2007年。
エルミタージュで6世紀にわたってワイン造りを続ける名門で、現当主のジャン・リュイ・シャーヴ氏は、ローヌのシラーならシャーヴと言われるくらい評価の高い造り手。
そのため、エルミタージュのドメーヌ物は価格が高騰し、手が届かなくなった。
このファルコネは、ドメーヌのぶどうと購入ぶどうを合わせて造られたスタンダードクラスのエルミタージュ。
ぶどうは、シラー100%。
プラム、カシス、インク、スパイスのニュアンス。
タンニンは強く重い。
期待に反しない素晴らしいシラーである。
右がフェヴレのピノ・ノワール、左がシャーヴのシラー。
やはり色合いはシラーの方が濃い。
どちらも素晴らしいが、二人ともピノの方が好きだということで、意見が一致。
こんな贅沢な飲み較べは楽しい。
肉料理は、小鴨胸肉のロースト、根セロリのピューレ、ほろ苦いオレンジのソース。
鴨にオレンジのソースは、定番メニュー。
これもリヨンの『ポール・ボキューズ』のスペシャリティなのだ。
焼いた穂付きトウモロコシも香ばしくて美味い。
ディジェスティフは、ポート・ワイン。
ロゼスが造る、インファンタ・イザベル、10年。
10年熟成のトゥニーである。
ロゼスは、ポルトガル系のボルドーのネゴシアンがポルトガルで始めたポート・ワインの会社。
そのためか、フランスでとても人気のあるポートである。
樽熟成されたトゥニー、オールド・ポートは本当に美味い。
彼女は甘いフォーティファイド・ワインは苦手なので、一口飲んだだけで私の前にグラスを置く。
私は大好きなトゥニー・ポートなので、思わず笑みがこぼれてしまう。
デセールは、ガトー・マルジョレーヌ。
まさに、『ラ・ピラミッド』のスペシャリティ。
ガトー・マルジョレーヌに出会えるとは、今夜は幸せ。
コーヒーのアイスクリームが添えられている。
「メゾンの料理は本当に美味しいわね。ワインも素晴らしかったわ。今夜もありがとう」と彼女。
今夜は、ワインはブルゴーニュとローヌの飲み較べ、料理は『ポール・ボキューズ』と『ラ・ピラミッド』の名物料理の再現で素晴らしかった。
この、金の彩色が施されたコーヒーカップセットが好きだ。
食事を終えようと思ったら、ミニャルディーズとして、ブルターニュ地方の菓子4種が届いた。
ミニャルディーズとは小菓子の意味だが、これは決して小さいとは言えない。
それでも4つすべてを皿に乗せてもらい、食べてしまう。
「今夜は食べ過ぎ。苦しい」と私。
「何時ものように、恵比寿まで歩きましょうよ」と彼女。
代官山の『メゾン ポール・ボキューズ』で彼女と過ごす楽しい夜は、素敵に更けて行きました。