初夏の頃、本郷三丁目で彼女と待ち合わせ。
本郷キャンパスに通った二年間に利用した駅なので、とても懐かしい。
今日はプレミアム・ハンバーガーの老舗、1996年開業の『ファイアー・ハウス』に行くことにしたのだ。
開業後22年余りを経た現在も人気で、店の前には順番待ちの人たちが溢れている。
そこで彼女と待ち合わせの30分前に店に行き、順番待ちのノートに名前を書きこんでから駅に戻り、彼女を迎えた。
話はちょっと脱線するが、プレミアム・ハンバーガーに関するお話し。
私が開業時から通っている広尾の『ホームワークス』が日本で最初のプレミアム・ハンバーガーのお店で、1985年開業。
日本でも人気の『シェイク・シャック』は2000年にN.Y.で創業。
そして私が好きなお店、『バビーズ』は1990年にN.Y.で創業している。
日本のプレミアム・ハンバーガーは、N.Y.の有名店と較べても負けない歴史を持っているのだ。
『ファイアー・ハウス』と聞くと、何時も『ワイルド・ファイアー』を思い出す。
シカゴのダウンタウン、ミシガン・ノースにあるステーキ・ハウスで、シカゴでは一番のお気に入り。
何時か彼女を連れて行きたいと思っている。
話は戻り、『ファイアー・ハウス』に少しの待ち時間で入店。
名前を書いた時はウエイティング・リスト8番目だったが、彼女を連れて戻った時は2番目になっていたのだ。
「わざわざ先にお店に来て順番待ちのノートに記入してくれたのね。貴方って、本当に気が利くわね。何時もありがとう」と彼女。
「だって、暑い外で君を待たせるわけにはいかないからね」と私。
入り口のレジの横には、お店のロゴの入ったTシャツやキャップが売られている。
店内には、テーブル25席、カウンター5席しかないので常に満席。
メニューのデザインが素敵だ。
さて、何を食べるかメニューを見ながら彼女と検討。
どのハンバーガーも美味しそうで、なかなか決まらない。
最初の料理は、アボカディオン・サラダ。
ドレッシングとレモンの間にあるのは、ホースラディッシュ。
この皿はかなり大きく、サラダの量も予想以上の多さ。
アボカドがたっぷり入っているので美味しい。
料理のお供は、カリフォルニアのシャルドネをボトルで。
お馴染みの、ロバート・モンダヴィ、ウッドブリッジ、シャルドネ、2016年。
ワインは、赤・白一種類ずつしか置いていないので、選択に悩む必要はない。
パイナップルやパッションフルーツ、熟した洋梨のニュアンス。
カリフォルニアのシャルドネらしく、酸は少ない。
ハンバーガーに合わせてガブガブ飲むには丁度良い。
続いて、オニオンリング。
これはハーフ・ポーションにした。
アメリカで食べるときは、この5倍くらいのヴォリュームがある。
オニオンリングやハンバーガーには欠かせないトマトケチャップとマスタード。
CONQUER THE UNKNOWN WORLD(未知の世界を征服)と書かれ、絵はTATAR WARRIORS(タタール人戦士)。
タタール人とはロシアに住むトルコ系民族。
フライド・オクトパス。
これは驚きのメニュー。
アメリカでは有り得ないメニューで、必ずあるのはフライド・カラマーリ。
でも、このタコの唐揚げ、とても美味い。
いよいよハンバーガーが届く。
彼女が選んだのは、モッツアレラマッシュルーム・バーガー。
バンズは、天然酵母バンズ。
私はちょっと珍しいハンバーガーを選んだ。
アップル・バーガーには、林檎のシロップ煮がたっぷり。
バンズには、生クリーム。
ハンバーガーとアップルパイを同時に食べているような不思議な味わい。
彼女のデザートは、チョコレート・シェイク。
とても美味しいとのこと。
奧に座っている可愛い女性が写り込んでしまった。
私のデザートは、ガトーショコラとアイスクリーム。
ケーキもアイスクリームも想定外の大きさ。
食後の飲み物は二人ともコーヒー。
「今日も美味しかった、ありがとう」と彼女。
「でも、食べ過ぎだね。少し散歩しようよ」と私。
店を出ると、春日通りを本郷通り方向に向かう。
途中の小路の奥には、櫻木神社。
御祭神は、菅原道真。
合格祈願のご利益があると言われ、本郷のパワースポットとして有名。
本郷通りを左折し、赤門に至る。
加賀藩の下屋敷の門。
将軍家の姫君が嫁いだので赤い門が建立され、今に残っている。
赤門を入ると、経済学部が入る赤門総合研究棟が右手にある。
銀杏の葉も緑が濃くなっている。
お腹を少しでも楽にするため、三四郎池に下ることにする。
池までは結構な高低差があるのだ。
右に左にと道を折れながら進むと、ようやく水面が見えてきた。
森の緑の奥深くに佇む池の水面は、鏡のような静寂に包まれている。
ここに来ると、Pity is akin to love、可哀想だた惚れたって事よ、という三四郎の一節を思い出す。
雲一つない青空に、安田講堂が聳え立つ。
講堂自体にはあまり縁がなかったが、地下の学食にはお世話になった。
安田講堂から正門に向かう。
銀杏並木の緑がとても濃い。
法文一号館の中央のアーチは本当に綺麗だ。
正門には向かわず、左折して総合図書館に向かう。
総合図書館の建物も重厚な佇まい。
図書館別館は、この手前の地下にある。
総合図書館の横を抜け、再び赤門に向かう。
途中のコミュニケーション・センターには、公式グッズのポスター。
日本酒にワインまであるとは知らなかった。
赤はマスカットベリーA、白はリースリング。
赤門を抜け、本郷通りを三丁目方向に歩く。
本郷三丁目駅の手前に、懐かしい店を見付けた。
私が学生だった頃の店は、本郷界隈には数える位しか残っていない。
名曲喫茶『麦』ではクラシック音楽を聴きながら、難解な数式を解くのに没頭したものだ。
今となっては、まだ頭がフル回転していた頃の懐かしい想い出。
彼女と過ごす、本郷での楽しい午後でした。