表参道の人気のフレンチ・レストラン、『ラス』で過ごす楽しい夜の続き。
『ラス』のメニューは”お任せコース”一種類のみ。
そしてワインはフル・ペアリングのコースをお願いしている。
このエチケットを見た途端、きっとポルトガルのワインなのだと思った。
ポルトガル、リスボアのエンコスタ・ダ・キンタが造る、フムス、ロゼ。
初めて飲むワインだ。
美しいピンク。
香りはフルーティーだが、キリリと引き締まった辛口。
ぶどうはトゥリガ・ナシオナルで、栽培はオーガニック。
ビスク・オ・バスク、オレガノ香るチョリソーとホタルイカの濃厚ソース。
ビスク・オ・バスクに塗られた赤いソースは、赤パプリカ、ニンニク、玉ねぎ、トマト等にナッツを加えて作る、ロメスコソース。
これがチョリソーとホタルイカの濃厚ソース。
ホタルイカの内臓の苦みが効いた美味いソースだ。
ビスク・オ・バスクを濃厚ソースに漬けて食べる。
今まであまり味わったことのない旨味が口いっぱいに広がる。
これはまた面白いワインが出された。
フクロウのエチケットのワインは多いが、このワインは初めて。
ストルプマン・ヴィンヤードが造る、パラ・マリア、シラー、サンタ・バーバラ、2017年。
カリフォルニアのシラーであればストルプマンと言われるだけあって、強く洗練されたボディの素晴らしいシラーだ。
セパージュは、シラー85%、プティ・ヴェルド15%。
岩手県産奥の都鶏のロースト。
ホワイトアスパラガスのシーザースタイル、赤ワインソース。
ホワイトアスパラガスはオランダ産。
黄色いソースは、紅花玉子。
ここで口直しのデザート、リンゴとカルダモンのグラニテ。
続くワインで彼女の機嫌が悪くなってしまう。
出されたワインは、スペインのエミリオ・ルスタウが造る、エミリオ・ルスタウ・ベルムート。
スペインのシェリー・ベースのベルモットである。
出された時に「あれ?」と思ったが、甘いデザート・ワインは出ないはずなので、ドライ・ベルモットなのかなと思った。
ところが、甘いデザート・ワインなのだ。
席に着いたときに、「デザート・ワインは苦手なのでペアリング・ワインから外して普通のワインに変えて下さい」とお願いしたのに、要請を無視されたことに彼女は怒ったのだ。
「飲まない」と彼女。
もったいないので、私が無理して二杯とも飲むことになってしまった。
木の箱に入れられて運ばれてきたのは、二つの紙コップ。
カカオクランブルとコーヒーアイスのカプチーノデザート。
中にはコーヒーのムースが入っている。
食後の飲み物は、広島県 梶谷農園から届いた季節のフレッシュハーブティー。
何が入っているか説明があったが、早口で聴き取れず。
フレッシュハーブティーには癒される。
お会計を済ませ帰ろうとするが、ここで問題発生。
金額が予想より高いので明細をチェックすると、料理代、ペアリング・ワイン代に、テーブル・チャージ、ミネラルウォーター代、ここまではわかるとして、デザート・ワイン代が付いている。
「ペアリング・ワインからデザート・ワインは飲まないので外してくれと言ったのに出されてしまったのは残念だが、何故別に代金が付いているのか」と質問。
「ペアリング・ワインからデザート・ワインは外しました。飲まれたデザート・ワインは別料金でお出ししたものです」との回答。
これには流石に温厚な私も切れてしまった。
「デザート・ワインが苦手だから外してもらったのに、それを別料金だと説明もしないで出すとはいったい何を考えているんだ」と私。
するとオーナーシェフに相談しますと言って、戻ってきての回答は、「飲んだものは払ってもらいます」の一言。
「もちろん代金は払う。私が言っているのは金額の多寡ではなく、何故このような客の要望を無視した対応をして一言の謝罪も無いのかということだ」。
これには無回答。
「こんな対応をする店には二度と来ない」と言いおいて、店をあとにした。
「料理は美味しかったのに、最後に嫌な思いをさせてごめんね」と私。
「料理は良かったのに、サービスは酷かったわね」と彼女。
気が付くと、目の前には写真で見たことがある奇抜な建物。
ここは台湾のパイナップルケーキのお店、微熱山丘、サニーヒルズの東京店だ。
ヒノキの角材を地獄組みという技法を用いて作られた建物で、隈研吾氏の設計である。
プラダビルは夜になると昼とは違った建物に見える。
『ラス』はちょっと残念だったが、彼女と過ごす南青山の夜は素敵に更けていきました。