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写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策、アーティゾン美術館、京橋 3

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京橋の「アーティゾン美術館」で、ちぃさんと鑑賞する企画展の続き。

6階で開催されているのは、”写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策”。

 

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セクションⅣは、再び柴田敏雄の作品。

ここで柴田が自分の作品とのコラボに選んだのは、カンディンスキーの絵画と円空の仏像。

 

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柴田敏雄、「山形県米沢市」(2019年)。

柴田敏雄の作品は水の表現がとても美しく、硬いコンクリートの構造物としなやかな水のコントラストが素晴らしい。

自然と人工物の調和を奥行きのある画面に落とし込む、柴田敏雄が目指すフォルムだ。

 

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ヴァシリー・カンディンスキー、「3本の菩提樹」(1908年)。

カンディンスキーは20世紀前半の抽象絵画の創出と発展に大きな役を理を果たしたロシア出身の画家。

バイエルン州のアルプス山脈に近い場所で描かれた、カンディンスキーの作風が大きく変化した頃の作品。

強い構築性を持つ構図と溢れるばかりの固有色の組み合わせが一体となって不思議な調和を生み出している。

 

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円空、「仏像」(江戸時代 17世紀)。

柴田敏雄は自分の作品との対比に、円空の仏像を選んでいる。

江戸時代の修験僧であり仏師でもあった円空は日本各地を行脚し、12万体の仏像を作ることを発願したとされ、5千体以上が現存している。

 

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二体目も、円空、「仏像」(江戸時代 17世紀)。

各地の山林の樹木をそのまま用い、装飾を一切施すなく粗いタッチで彫られた仏像には、不思議な霊力、そして自然との調和を感じることが出来る。

これも人造物と自然の調和のひとつの形なのだろう。

 

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セクションⅤは再び鈴木理策の作品と、絵画・彫刻とのコラボ。

ここで鈴木理策は二つのテーマをあげている。

 

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鈴木理策、「りんご 21,P-11,P-13,P-2,P-32,P-52」(2021年)。

一つ目のテーマは、”絵画を生きたものにすること”。

ここで鈴木が選んだのは、ピエール・ボナールとアルベルト・ジャコメッティ。

 

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ピエール・ボナール、「ヴェルノン付近の風景」(1929年)。

ノルマンディー地方、ヴェルノンの自宅近くの風景を描いたもの。

奥に突き抜けた中心を明瞭に描き、周囲は抽象的に曖昧に描く構成は、ボナールが人間の眼が見ている情景をそのまま絵画に落とし込んだもの。

この思想は鈴木理策の写真に共通しているのだそうだ。

 

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ピエール・ボナール、「桃」(1920年)。

ボナールの絵を理解するのに、そしてここで鈴木理策がボナールを選んだ理由を知るのに役立つボナール本人の言葉がある。

「絵画にまったくふさわしい公式がある。一個の大きな真実をつくり出すためのたくさんの小さな嘘」。

「要は、生きた対象を描くのではなく、絵画を生きたものにするということである」。

 

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アルベルト・ジャコメッティ、「歩く人」。

このテーマで取り上げられているもう一人の作家は、アルベルト・ジャコメッティ。

 

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アルベルト・ジャコメッティ、「矢内原」(1958年)。

矢内原伊作は実存主義哲学の研究者。

フランス国立科学研究センターの研究員としてパリに滞在していた時にジャコメッティと出会い、モデルを務めた。

その後もジャコメッティは日本に帰国した矢内原を四回もモデルとしてパリに招聘しているほど、矢内原を描くことに拘った。

凡人の私から見ればこの絵を描くのにわざわざ日本からモデルを呼ぶことは無いと思うのだが、描き、造ることにより、その存在の本質を追求するジャコメッティにとって、実存主義哲学の研究者である矢内原は欠くことのできない存在だったのだろう。

 

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アルベルト・ジャコメッティ、「ディエゴの胸像」(1954-55年)。

ジャコメッティの”見えるものを見えるとおりにかたちづくり、描くことで、つくられたものの本質に迫ることを追求する”制作態度に、鈴木理策は自分との共通点を見出している。

 

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二つ目のテーマは、”交わらない視線”。

左右に並ぶ多くの顔写真の奥には、一枚の肖像画。

ここで鈴木が選んだのは、マネ、岸田劉生、アングル、古賀春江、ビゴー、ヴュイヤール。

左右に並ぶ顔写真は、鏡に映る自分を見つめる人を、ハーフミラー越しに撮影した作品群。

自分を見つめる肖像写真と、自分が見た自分を描いた肖像画の共通点を追及している。

 

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突き当りの肖像画は、エドゥアール・マネ、「自画像」(1878-79年)。

マネは肖像画の名手でもあったが、自画像は二点しか描いていない。

この絵で面白いのは、鏡を見て描いたため、左右反転していること。

上着が右前になっているし、身体を支えている脚が不自由だった左足になっている。

本人はこの左右反転に気が付いていたのだろうか。

この絵は私的に描いたもので、親しい人にしか見せなかったのだそうだ。

 

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岸田劉生、「麗子坐像」(1920年)。

劉生は妻の蓁や娘の麗子をモデルにした絵を繰り返し描いている。

それだけ家族への愛情が強かったのかと思っていたが、どうやら絵に異常なまでの拘りを持ち癇癪持ちでもあったことから、モデルのなり手が居なくなったためのようだ。

 

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岸田劉生、「画家の妻」(1914年)。

劉生の妻、蓁(しげる)が24歳の時の絵。

和風の顔立ちの若い蓁が、随分ごつごつした年長の女性に描かれている。

 

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エジプト(ファイユーム)、「ミイラの顔面覆い肖像画」(1世紀-2世紀)。

この顔立ちは近年に描かれたものだと思って観ていたら、1~2世紀の作品とは驚きだ。

 

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岡田三郎助、「婦人像」(1907年)。

これは誰でも一度は見たことがある絵。

1907年の東京勧業博覧会で一等賞となった作品で、三越呉服店の経営陣の一人、高橋義雄に依頼され、その妻、千代子を描いたもの。

三越呉服店のポスターや切手の原画として使われたので有名。

 

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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル、「若い女の頭部」。

頭部一点に意識が集中する、美しい絵だ。

この絵は描かれた年がわからないようだ。

 

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古賀春江、「自画像」(1916年)。

日本で最初のシュールレアリスムの画家の一人。

詩歌にも通じ、その言葉は美しい。

「水彩は長編小説ではなく詩歌だ。その心算(つもり)でみて欲しい。水彩はその稟性(ひんせい)により、自由にして柔らかに而(しこう)して淋しいセンチメンタルな情調の象徴詩だ。そのつもりで見て欲しい」。

 

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ジョルジュ・ビゴー、「日本の女」。

ビゴーと言えば風刺漫画家として有名。

 

「魚釣り遊び」(1887年)

この絵を見たことがある人は多いはず。

魚(朝鮮)を狙う日本と中国、それを横取りしようとするロシアが描かれている。

 

ビゴーは、1882年(明治15年)に来日し、1899年(明治32年)にフランスに帰国。

この間、1894年(明治27年)に34歳で、17歳年少の日本人女性、佐野マスと結婚しているが、離日時に離婚し、フランスで再婚している。

 

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エドゥアール・ヴュイヤール、「鏡の前」(1924年頃)。

ヴュイヤールは私には馴染みのない画家。

モーリス・ドニ、ピエール・ボナールなどと共にナビ派の一人。

穏やかな作風が、観ていて心地よい。

京橋の「アーティゾン美術館」での楽しい企画展鑑賞は続きます。

 

ところで、今日最高に楽しい記事を見付けました。

この動画、観る人を明るく楽しくさせてくれますよ!

 

 

 

 

 

 

 

 


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