京橋の「アーティゾン美術館」でちぃさんと過ごす楽しい企画展鑑賞の続き。
観ている企画展は、”Transformation 越境から生まれるアート”。
第3章は、”移りゆくイメージ-パウル・クレー”。
私も多くの日本人同様、絵画の知識と興味はルネッサンス、新古典主義、写実主義や印象派で途絶えてしまい、その後の美術界の変遷については無知であるため、パンフレットの紹介を丸写し。
「20世紀前半は、新たな美術を志向するアヴァンギャルドの動きが国際化を牽引する時代です」。
「画業初期、同時代のフランス美術に影響を受けたドイツ人画家クレーは、第一次大戦後、総合造形学校バウハウスのマイスターとして、あるいはシュルレアリスムの先駆者として、多様なイメージのもとに受容されていきます。その多面性は、美術をめぐる戦間期のドイツとフランス、さらにはヨーロッパとアメリカの関係の変容を映し出しています」。
ジョルジュ・ブラック、「円卓」(1911年)。
ブラックはピカソとの関係を”ザイルで繋がれた二人”と表現し、二人で1909年頃にキュビスム絵画を創出。
円卓の上には、絵筆、パレット、絵の具など、絵を描くのに必要な道具類。
ロベール・ドローネー、「街の窓」(1912年)。
この絵は石橋財団の新規収蔵品で、今回の企画展が初公開。
この絵の重要性については、以下参照。
パウル・クレー、「小さな抽象的-建築的油彩(黄色と青色の球形のある)」(1915年)。
1910年代は、ピカソやブラックが主導したキュビスムが美術界に大きな影響を与えた時期。
フランスの美術界の動向に刺激を受け、この絵は”クレーがこれからクレーになろうとしている時期”の作品なのだそうだ。
「アーティゾン美術館」はクレーの絵を27点も所蔵している。
パウル・クレー、「平和な村」(1919年) 水彩、グワッシュ。
石橋財団の新規収蔵品。
パッと見ただけでは村に見えない。
三角形や四角形は家、緑は樹々、そして細長い線は道を表し、遠景には波型の山々が見える。
描かれたのは1911年のミュンヘン。
第一次世界大戦が終結したばかりのミュンヘンは厳しい混乱の中にあった。
その中で平和を希求して描かれた作品。
パウル・クレー、「庭園の家」(1919年)。
庭園にある家を描いたと言えば、確かにそう見える。
パウル・クレー、「ストロベリーハウスの建築工事」(1921年)。
パウル・クレー、「家の投影」(1923年) 水彩、インク。
この年代頃から画風が変化しているのがわかる。
パウル・クレー、「数学的なヴィジョン」(1923年) 油彩、水彩。
何だかとてもユーモラスな作品。
この時期クレーはバウハウスのマイスターとして働いていて、教育者および研究者として、線や色彩を始めとする造形の理論的な追及に取り組んでいたのだそうだ。
パウル・クレー、「空飛ぶ竜の到着」(1927年)。
フランシス・ピカビア、「アニメーション」(1914年) グワッシュ、水彩、鉛筆。
ピカビアはフランス人のキュビスム、ダダイスム、そして一時期シュルレアリスムの画家。
ピカソと同じく時期により作品のスタイルが目まぐるしく変わったことで知られる。
この作品はフォーヴ・キュビズム・オルフィスムの時代の作品。
大の車好きで、生涯に170台の車を購入したのだそうだ。
パウル・クレー、「守護者のまなざし」(1926年) インク、水彩。
ガラスが入っているので、ちぃさんと私が写っていて絵が見えにくい。
幼い子供を抱いた母親の図像。
観る人によって色々なイメージが膨らむ作品だ。
パウル・クレー、「負け試合」(1928年)。
この絵は一度描いた絵の左半分を切り取って単独の作品としたもの。
右半分には犬の彫像が描かれていた。
描いた絵を切断してばらばらの作品にしたり、切断したものを組み合わせて再構築したりするのがクレーの特徴なのだそうだ。
パウル・クレー、「守護者」(1932年) 水彩。
1936-37年にニューヨーク近代美術館で開催され、アメリカにおけるシュルレアリスム受容の大きな契機となった展覧会、「幻想美術、ダダ、シュルレアリスム」の出品作品。
クレーの絵は20点が展示され、重要な地位を占めていた。
パブロ・ピカソ、「少女に導かれる盲目のミノタウロスⅡ(「ヴォラールのための連作」より)」(1934年) エッチング。
アテナイの王子テーセウスによって殺されたはずのミノタウロスが盲目となって生き残っていて少女に導かれるというこの絵の背景は実に興味深い。
でも話は長くなるので、ここでは省略。
ジョアン・ミロ、「夜の女と鳥」(1944年)。
とても馴染みのある絵だ。
「アーティゾン美術館」にはミロの絵や版画が21点収蔵されている。
ジョルジョ・デ・キリコ、「吟遊詩人」(1948年)。
イタリア人の画家で形而上絵画の旗手。
後のシュルレアリスムに大きな影響を与えた。
彼の謎に満ちた不思議な絵画は一度見ると忘れない。
座右の銘は、「謎以外の何を愛せよう」というニーチェの言葉。
パウル・クレー、「島」(1932年)。
点、線、面、そして色彩という基本的要素を使って造形の無限の可能性を追求する作品なのだそうだ。
音楽を表現したとも言われているが、シチリア島を訪問した後に描かれており、標題どおり島を描いているのかもしれない。
ジャン・アルプ、「夢ともくろみ」(1952年) 木版。
アルザス出身の彫刻家・画家で、ダダイスム、シュルレアリスム活動を通じ、クレーとも親交があった。
これで第3章は終了。
第4章へと続きます。